1-38-0 刑法判例38-事後強盗罪の成否

(1) 事案(最判H16.12.10)

Xは、金品窃取の目的で、平成15年1月某日の午後0時50分ころ、A方住宅に、1階居間の無施錠の掃き出し窓から侵入し、同居間で現金等の入ったサイフ及び封筒を窃取し、侵入の数分後に玄関扉の施錠を外して戸外に出て、誰からも発見・追跡されることなく、自転車で約1km離れた公園に向かった。 Xは、公園で盗んだ現金を数えたが、3万円余りしかなかったため少ないと考え、再度A方に盗みに入ることにして自転車で引き返し、午後1時20分ころ、A方玄関の扉を開けたところ、室内に家人がいると気付き、扉を閉めて門扉外の駐車場に出たが、帰宅していた家人Bに発見された。そこでXは、逮捕を免れるため、ポケットからボウイナイフを取り出し、Bに刃先を示し、左右に振って近付いた。するとBがひるんで後退したので、すきを見て逃走した。 Xに事後強盗罪が成立するか。





2 実践的書き方

第1 Xの罪責 1 窃盗罪(235条)…((1)(2)(3)(4)(5)→肯定、成立)2 事後強盗罪(238条)、脅迫罪(222条) (1)…((6)(7)(8)(9)(10)→肯定、成立) 2 事後強盗罪(238条)、脅迫罪(222条) (1)さらにXは、A方に戻ってBに対し、ナイフを左右に振って近づくという、(11)(12)するに(13)(14)を加えている。そこでXに(15)が成立するか。 ※一次規範を「窃盗の機会が継続していたことが必要」と設定しても構いません。 この点、(16)の成立には、被害者等から容易に発見されて、(17)(18)、あるいは(19)得る状況(20)していることが必要と解する。なぜなら、同条の趣旨は、(21)犯人が238条所定の(22)をもって(23)(24)を加えることが(25)(26)な事態であるため、特に(27)化した点にあるからである。 (2)そこで検討すると、Xは家人不在のA方で発見されることなくいったん1キロ離れた公園に到着している。とすれば、そこでXがそのまま離脱すれば、通常は被害者から発見されることもなく、財物を取り返されたり、逮捕されることもなかったと認められる。 したがって、Xには事後強盗罪は成立しない。 (3)もっとも、Xはナイフを左右に振ってBに近づいているので、Bの(28)(29)(30)旨を(31)(32)したといえ、(33)(222条1項)が成立する。 3 以上より、Xには(34)(35)が成立し、併合罪(45条)となる。

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