1-24-0 刑法判例24-共犯関係の解消
(1) 事案(最決H1.6.26)
XはYの舎弟分であったが、昭和61年1月23日の深夜、スナックで一緒に飲んでいたVの酒癖が悪く、再三たしなめたのに、逆に反抗的な態度を示したことに憤慨し、Vに謝らせるべく、車でY方に連行した。XとYは、Y方においてもVが反抗的な態度をとり続けたことに激昂し、その身体に対して暴行を加える意思をYと通じた上、翌24日午前3時30分ころから約1時間ないし1時間半にわたり、竹刀や木刀でVの顔面、背部等を多数回殴打するなどの暴行を加えた。 Xは、同日午前5時過ぎころ、Y方を立ち去ったが、その際「おれ帰る」といっただけで、自分としてはVに対しこれ以上制裁を加えることを止めるという趣旨のことを告げず、Yに対しても、以後はVに暴行を加えることを止めるよう求めたり、あるいはVを寝かせてやってほしいとか、病院に連れていってほしいなどと頼んだりしなかった。 その後Yは、Vの言動に再び激昂して、「まだシメ足りないか」と怒鳴ってその顔を木刀で突くなどの暴行を加えた。 その後結局Vは、Y方において甲状軟骨左上角骨折に基づく頸部圧迫等により窒息死したが、Vの死の結果は、Xが帰る前にXとYが加えた暴行によって生じたものか、その後のYによる暴行により生じたものかは断定できなかった。 そこで、先に帰ったXに傷害致死罪の共同正犯が成立しないかが争われた。
3 実践的書き方
第1 Yの罪責 1 傷害致死罪(205条) …(客観的構成要件、死亡結果について検討→肯定) 第2 Xの罪責 1 共謀・正犯意思 ※離脱・解消の問題が、どこに位置づけられるかはハッキリしませんが、ここでは「共謀」の中で書きました。 (1)XはVをY方に連行し、Yと共にVに暴行を加える(1)を(2)いるので、暴行罪の範囲で(3)があったといえ、(4)もある。 (2)共犯関係の解消 もっともXは午前5時ころにY方を立ち去り、以降Vに暴行を加えていない。そこで、この時点でYとの(5)が(6)されたといえるか。 そもそも、(7)の(8)は、(9)に対する(10)・(11)(12)を与えた点にある。とすれば、(13)の(14)と(15)は、(16)が(17)に与えた(18)を解消しえたか否かで決すべきである。 (あてはめ)※この部分は、判例が、事案を評価しているところ。 そこで検討すると、XはYを立ち去る際、Yに「おれ帰る」と告げてはいるが、これ以上Vに制裁を加えることはやめるべきだとか、Vを寝かせてやってほしいとか、病院に連れて行ってほしいと告げることは無かった。そうすると、Yとしては「XはまだVを許したわけではない」と理解するのが通常だから、Xが共犯者Yに与えた「Vが反省するまで暴行する」という(19)の(20)を(21)しえたとは言えない。 以上より、XがY方を立ち去ることによって(22)の(23)があったとは言えない。 ※オリジナルの評価を少し加えるとすれば、こんなところ? 2 実行 そして、共謀者であるYは上記の通り暴行の実行行為を当初から最後まで実行しているので、共犯者の一部による実行があるといえ、かつこのYの暴行とVの(24)・(25)との間には(26)が認められる。 3 以上より、XとYとは(27)の(28)(205条、60条)となる。
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