1-05-0 刑法判例5-侵害の急迫性
1 侵害の急迫性
(1) 事案(最決S52.7.21)
昭和46年ころ、X1~X6は、学生運動(中核派)に参加していた。そして同年12月18日、X1らは福岡市内所在の福岡県教育会館にて政治集会を開くこととしてその準備をしていた。 そこへ、同日午後1時10分ころ、対立する他派団体(革マル派)所属の者Z1ら約10名が同会館に押しかけてきたため、X1・X2らは演壇の付近に置いてあつた木刀、ホッケースティック、鉄パイプ等で、Z1に対し同人の頭部、肩、腕等を滅多打ちして仮借のない攻撃を加えた(第一暴行)。しかしZ1らは結局、そのまま逃走した。 その後、X1らは、革マル派所属の者が態勢を整えて再び襲撃してくることは必至と考え、同会館の南側入口扉の内側に長机や長椅子を積み重ねるなどしていた。しかし、そうこうしているうちに、早くも革マル派の者Z2ら約4名が同会館の西側入口扉付近に来襲して、扉を破ったり、その片側を開いてバリケードの隙間等から鉄パイプを投げ込んだり、工事用の長さ2m余りの鉄棒を突き出したり投げ込んだりするので、X1・X2らもバリケード越しに鉄パイプを投げたり、投げ込まれた工事用の鉄棒で突き返すなどして応戦した(第二暴行)。 やがて、通報によって駆け付けた警察官により、まず革マル派の者らが逮捕され、次いでX1らもその場で逮捕された。 X1・X2らは、兇器準備集合、暴力行為等処罰に関する法律違反(兇器準備集合と共同暴行)で起訴されたが、X2らの第二暴行について正当防衛が成立するのではないかが問題となった事案。
(3) 実践的書き方
1 X2の第二暴行について (1)X2はバリケード越しに鉄パイプを投げたり、投げ込まれた工事用の鉄棒で突き返すなどしていることから、(1)な(2)を行使していると(3)として言え、暴行罪の(4)にあたる(208条)。 ※第二暴行の結果がはっきりしないので、ここでは暴行罪としておきました。 また、X2には、暴行罪の(5)も認められる。 2 違法性阻却事由 (1)もっとも、X2は、Z1らの(6)に対する(7)という形で第二暴行を行っているので、X2の行為は(8)(36条1項)とならないか。 (2)この点、第二暴行に先立ち、Z2らが本件会館の西側入口扉付近に来襲して、バリケードの隙間から鉄パイプを投げ込んだりしているから、「(9)の(10)」が存在していたといえる。 ※正当防衛の要件を①、②、…と先出しする書き方もありますが、同じことを2回書くだけになり長くなるので、ここでは省略して条文に当てはめる形で書きました。 (3)そして、X2の行為は、このZ2らの行為をやめさせるためにしたものと考えられるから、「(11)」の行為といえる。 (4)また、Z2らの攻撃は、鉄パイプを投げ込むなど、(12)なものだったから、X2らがバリケード越しに鉄パイプを投げたり、投げ込まれた工事用の鉄棒で突き返す行為は、(13)かつ(14)なものだったと認められる。 ※(15)・(16)の判断は、微妙なものになりやすいので注意! (5)また、(17)の内容は、(18)の(19)の存在を(20)しつつこれを(21)とする単純な(22)をいうと解するから、第二暴行時のX2らにもこれがあったことは認められる。 ※防衛の意思について、細かい問題提起までは行ってませんが、正当防衛の事案はとかく論述が長くなりがちなので、とにかく短くまとめました。 (6)もっとも、(23)についてはどうか。この点、(24)の(25)を(26)していただけでは、(27)の(28)は失われないが、(29)の(30)を(31)して(32)に(33)する(34)まで持っていた場合には、(35)の要件は(36)と解する。なぜなら、(37)まである場合は、(38)の(39)が(40)される(41)は低くなるので、(42)が(43)からである。 (あてはめ)これを本件についてみると、X2らは、Z1らが第一暴行に来襲したことを踏まえ、本件会館の南側入口扉の内側に長机や長椅子を積み重ねるなどしており、Z2らの(44)の(45)を(46)していたものと認められる。さらに、X2らは、そもそも政治集会の開催の予定であったにも関わらず、本件会館に木刀、ホッケースティック、鉄パイプ等の主に攻撃に用いる(47)を(48)していることから、第一暴行時からすでに(49)の(50)を(51)して(52)に(53)する意思を持っていたと認められる。 ※(54)について、本件では第二暴行時の事情がそこまで詳しくないので、第一暴行時も含めた周辺事情から拾ってきました。 ※前段で、(55)・(56)を認めている場合、論理矛盾を起こさないように注意すること。 (7)以上より、本件では(57)の(58)をみたさず、(59)は(60)しない。したがってX2の第二暴行は暴行罪となる。
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