1-13-0 刑法判例13-不同意性交等罪における実行の着手

(1) 事案(最判S45.7.28)  Xは、昭和43年1月26日午後7時30分頃、勤務先のダンプカーに友人Yを同乗させ、ともに女性を物色して情交を結ぼうとの意図のもとに山口県のとある市内を徘徊走行していた。Xらは1人で通行中のA(当時23歳)を見つけ、「車に乗せてやろう。」等と声をかけながら約100m尾行したものの、まったく相手にされなかった。そこで、いら立ったYが下車して、Aに近づいていった。Xはそれを見て、付近の空地に車をとめて待ち受けた。その後、YがAを背後から抱きすくめてダンプカーの助手席前まで連行して来ると、YがAを強いて姦淫する意思を有することを察知し、Yと強姦の意思を相通じた。そしてXは必死に抵抗するAをYとともに運転席に引きずり込み、ダンプカーを発進させ、同所より約5km西方にある大橋の北方約800mの護岸工事現場に移動した。そして、同所において、運転席内でAの反抗を著しく困難にしてY、Xの順に姦淫(現・性交等)したが、前記ダンプカー運転席にAを引きずり込む際の暴行により、Aに全治約10日間を要する左膝蓋部打撲症等の傷害を負わせた。  そこで、Xに、Aに対する強姦致傷罪(現・不同意性交等致傷罪)が成立するかが争われた。





(3) 実践的書き方 第1 Xの罪責 1 不同意性交等罪(177条1項、176条1項1号)  Xは、13歳以上の者であるAに対し、運転席内で(1)(2)(3)にする(4)若しくは(5)を用いて性交等をしているので、177条1項の(6)(7)を満たす。また、Xには当該犯罪の(8)も認められる。 ※運転席内の暴行脅迫の有無は不明ですが、あったものと認定しています。 2 (9)(10)(181条2項) (1)本件でAは左膝蓋部打撲症等を負っているが、これにより同罪が成立するか。同打撲症を負った時点(ダンプカーの運転席に引きずり込まれた時点)で(11)(12)があったかが問題となる。 ※今回は、致死傷の中で着手を書いてみました(Yが先にAを抱きすくめたりしていて、ややこしいので)。 (2)この点、(13)とは、(14)(15)(16)(17)(18)を有する行為をいう。  (あてはめ) そこで検討すると、夜間、護岸工事現場のダンプカーの運転席に女性が引きずり込まれれば、周囲から助けが得られる可能性もほぼなくなり、男性2名から強いて性交等をなされる(19)は極めて高い。したがって、この時点で(20)(21)を用いた(22)(23)(24)(25)(26)を有する行為が開始されたといえる。 ※事実→評価  よって、この時点でXに(27)(28)(29)が認められる。 (3)そして、Aは全治約10日間を要する打撲傷等を負っていることから、(30)(31)と言え、181条2項の(32)にあたる。 (4)以上より、Xに(33)(34)が成立する。 第2 Yの罪責 1 不同意性交等罪の共同正犯(60条)  …(共同実行の事実と意思の検討→成立)

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