1-15-0 刑法判例15-中止行為の任意性
(1) 事案(福岡高判S61.3.6) Xは、A女の経営するナイトパブCで飲酒するなどしていたが、午前4時に同店から閉め出された後、二階建て建物の壁をよじ登って二階にある同店の窓から店内に侵入し、未必的殺意をもってAの頸部を果物ナイフで一回突き刺した。 しかしその直後、Aが大量の血を口から吐き出し、呼吸のたびに血が流れ出るのを見て、驚愕すると同時に大変なことをしたと思い、直ちにタオルをAの頸部に当てて血が吹き出ないようにしたり、Aに「動くな、じっとしとけ。」と声をかけたりなどしたうえ、C店内から消防署に電話し、傷害事件を起こした旨告げて救急車の派遣と警察署への通報を依頼した。またXは、その後「救急車がきよるけん心配せんでいいよ。」とAを励ましたりしながら救急車の到着を待ち、救急車が到着するや、消防署員とともにAを担架に乗せて救急車に運び込み、そのころ駆け付けた警察官に「別れ話がこじれてAの首筋をナイフで刺した」旨自ら告げて、その場で現行犯逮捕された。 Aは直ちに病院に搬送され、手術を受けた結果、加療約8週間を要する頸部刺傷等の傷害を負うにとどまった。 そこで、Xに、Aに対する殺人罪の中止未遂が成立するかが争われた。
(4) 実践的書き方 第1 Xの罪責 1 …(殺人の実行行為の着手について検討→肯定) …(しかし結果は発生していない→未遂認定) 2 中止犯(43条但書) (1)本件でXは救急車を呼ぶなどしてAが死亡することを(1)しようとしている。そこでXに(2)が成立するか。 ※このあと、要件を検討していくので、同じことを2回書くことになるので、詳しい問題提起は省略しています。 (2)(3) ア まずXは「(4)」と言えるか。そう言えるためには、(5)が(6)していない(7)においてはそれ以降の(8)をしないことで足りるが、(9)が(10)している(11)においては、(12)の(13)まで行うことが必要と解する。 ※条文の順番とは逆になりますが、客観的に「中止した」と言えて初めて任意性が問題になることから、この順で書きました。 イ(あてはめ)Xは(14)をもってAの頸部を果物ナイフで刺突しているから、(15)の(16)の(17)・(18)(19)を有する行為を(20)しているといえ、(21)を(22)している。 ※実行行為終了の基準は深く考えると複雑ですが、ここでは簡単に認定しました。 しかし、直ちにタオルで止血行為を行い、かつ救急車の派遣要請を行い、また救急車が到着するまでAの救助を行っており、(23)の(24)を行っているといえる。したがって、Xは殺人という(25)を「(26)」と言える。 ※問題文の事実は「書き写す」必要はありません。どんな事実をどう評価したのかがわかればよいです。 (3)(27) ア (28)の(29)に(30)・(31)の(32)を要求する見解もあるが、「自己の意思により」という文言とそぐわないことから、かかる(33)は(34)であり、「たとえ(35)としても(36)」場合に(37)があり、「たとえ(38)も(39)」場合には(40)がないと解する。 イ(あてはめ)XはAが大量の出血をするのを目の当たりにし、大変なことをしたと感じてAの(41)に出ている。しかし、このときXの(42)を(43)する(44)はいなかったから、XがAを(45)することは(46)には(47)であった。またXはAに止血行為をし、救急車を呼ぶなど冷静かつ合理的に行動している。そうすると、もしXがAを(48)することを(49)に(50)なら、(51)にさらなる(52)をすることもできたと認められる。 ※客観・主観を対比させました。ここの評価は私見。結論は分かれ得るところ。 したがって、XはAの殺害を「たとえ(53)としても(54)」場合だと言え、(55)が認められる。 (4)なお、中止犯が(56)(57)とされる趣旨は(58)が(59)する点にあると解するので、(60)と(61)の間に(62)は(63)である。 (5)以上より、Xに殺人未遂罪が成立するが、(64)に(65)される。
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