1-33-0 刑法判例33-窃盗罪の保護法益

(1) 事案(最決H1.7.7)

Xは、多額の利益をあげようと企て、一次的には、いわゆる自動車金融の形式を用いて出資法による利息の制限を免れる外形を取って高利を得、二次的には、融資金の返済が滞ったときには自動車を転売して利益を出すこととした。そこで、「車預からず融資、残債有りも可」という広告を出し、これを見て訪れた客に対し、自動車の時価の2分の1ないし10分の1程度の融資金額を提示したうえ、用意してある買戻約款付自動車売買契約書に署名押印させて融資をしていた。 契約書に書かれた契約内容は、「(1)借主が自動車を融資金額でXに売り渡してその所有権と占有権をXに移転する。(2)返済期限に相当する買戻期限までに、融資金額に一定の利息を付した金額を支払って買戻権を行使しない限り、Xが自動車を任意に処分することができる。(3)買戻権が行使されない限り、Xは自動車につき直接占有権をも有し、その自動車を任意に運転し、移動させることができるものとする」というものであったが、契約当事者間では、借主が契約後も自動車を保管し、利用することができることは、当然の前提とされていた。 もっとも、Xとしては、自動車を転売した方が格段に利益が大きいため、借主が返済期限に遅れれば直ちに自動車を引き揚げて転売するつもりであったが、客に対してはその意図を秘し、まれに客に説明を求められても「不動産の譲渡担保と同じことだ」とか「車を引き揚げるのは100人に1人位で、よほどひどく遅れたときだ。」などと説明するのみであり、客には契約書の写しを渡さなかった。 Xは、借主である客Vの返済期限の数日後未明、Vの自宅の保管場所に赴き、契約当日に作っていたスペアキー(契約時に、自動車を点検するといってキーを預かり、Xが密かに作成していたもの)を利用して、Vに断ることなしにVの自動車甲を引き揚げ、さらに数日中にこれを転売した。 そこで、Xに窃盗罪が成立しないかが争われた事案。





(3) 実践的書き方

第1 Xの罪責 1 窃盗罪(235条) (1)(1)(2) 甲は自動車という(3)ある(4)であるから、「(5)」にあたる。もっとも、本件契約は売買契約であり、形式的には(6)はVからXに移転していることから、「(7)の」といえるかが問題となる。 この点、そもそも窃盗罪の(8)(9)(10)そのものと解する。なぜなら、複雑化した現代では、(11)そのものを保護する必要があるからである。 ※実質的な理由については何も言っていないが、論証としてはこれでいいでしょう。 そこで検討すると、本件では確かに契約上はXが甲を(12)し、(13)(14)することができるとされているが、Xは契約書の写しをVに渡さず、「不動産の譲渡担保と同じことだ」などと説明し、「車預からず融資」と広告もされている。したがって、実際にはVが車を利用できることが当事者間での(15)(16)とされており、甲の(17)(18)はVにあったものと認められる。 そしてこれは(19)であっても、Vが甲を(20)(21)している以上、変更はないと解する。 ※弁済期について言及しましたが、不要かも? したがって、Xが甲を引き揚げた時点において、甲は「(22)の」(23)にあたる。 (2)そして、XはVに(24)で甲を引き揚げ、(25)(26)に移しているので、「(27)した」にあたる。また、Xに(28)及び(29)(30)も認められることから、Xに(31)が成立する。

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