1-03-0 刑法判例3-第三者の行為と因果関係
1 第三者の行為と因果関係
(1) 事案(最決H18.3.27)
Xは、マンションの一室でゲーム機賭博場を開こうとした際、被害者Vから部屋の新規契約のために必要であるなどと言われて、同人に現金15万円を渡したが、その後、その部屋を契約することができなくなったにもかかわらず、Vは15万円を返還しなかった。 そこで、平成16年3月6日午前3時30分ころ、XはY・Zと共謀の上、Vを駐車場に呼び出して15万円の返還を求めたが、Vはこれに応じようとしなかった。そこで、XはVを車に乗せ、車内で顔面を数回殴打するなどの暴行を加えたうえ、Y・Zと共にVを同車のトランクに押し込んだ。 Xらは、Vを人気のない山中に連行し、そこで、Vを脅して15万円の返還を求めることにした。そして、Vを脅すためには人数が多い方がよいと考え、E及びFに電話をかけて、同人らを大阪府岸和田市所在のコンビニエンスストア「G」に呼び出した。Xらも、「G」に向かったが、同所の前を通過した際、Eの自動車が見当たらなかったことから、Xらは、同所付近の道路上に停車してE・Fらを待つことにした。 その停車した地点は、車道の幅員が約7.5mの片側1車線のほぼ直線の見通しのよい道路上であった。 Xらの車両が停車して数分後の同日午前3時50分ころ、後方から第三者Hが運転する普通乗用自動車が走行してきたが、Hは前方不注意のために、停車中の上記車両に至近距離に至るまで気付かず、同車のほぼ真後ろから時速約60kmでその後部に追突した。これによって同車後部のトランクは、その中央部がへこみ、トランク内に押し込まれていたVは、第2・第3頸髄挫傷の傷害を負って、間もなく同傷害により死亡した。 そこで、Xは(暴行、監禁致死で起訴されたが)致死の部分については因果関係がないとして争った事案。
(3) 実践的書き方
1 暴行罪 …(Xの暴行罪について検討→成立) 2 監禁罪 …(Xの監禁罪について検討→成立) 3 Vが死亡した点について (1)さらに、本件でVは死亡しているため、Xは(1)の(2)まで負うかが問題となる(221条)。 ア この点、本件のVは、第三者Hの(3)も原因となって(4)の(5)が発生していることから、Xが(6)の(7)まで負うかどうかは、Xの(8)の(9)が(10)に(11)したかどうかで決すべきである。なぜなら、刑法上の(12)は、行為者に(13)を(14)していいかどうかという(15)だからである。 イ ((16)の(17)) そこで検討すると、そもそも車のトランクは人が乗ることを想定した場所ではなく、むしろ追突事故が生じたときにはつぶれることによって衝撃を吸収する構造になっている。したがって、XがここにVを監禁することは、人の(18)という(19)が生じる(20)が極めて高い行為である。 ウ ((21)の(22))本件の追突は車道の幅員が約7.5mの、片側1車線のほぼ直線の見通しのよい道路上で起きており、追突事故の生じにくい状況だったとも考え得る。しかし、時刻は午前3時50分ころであり、居眠り運転などの起きやすい時刻であり、また、Hは故意に車を追突させたのではなく、前方不注意(過失)のために、追突したのであって、事故態様としては平凡なものである。したがって、(23)がそれほど(24)であるとは言えない。 ※一次規範のみを明示して、二次規範の3つの要素はあてはめの中だけで書く方法。(同じことを2回かかなくていいので、答案を短くまとめることができる。 エ ((25)の(26))そして、Hが後方から時速60キロで追突することによって、Vの身体に第2・第3頸髄挫傷という重大なダメージが加えられており、事故後まもなくVが死亡していることから、Hの追突がVの死に(27)した程度は大きなものと考えられる。 オ (評価) 以上のように見ると、(28)の(29)は大きいものの、その(30)はそれほど高いものでもなく、かつXの行為自体がVの死を引き起こす(31)の極めて高いものであることから、Xの行為とVの死の間には(32)が認められると考える。 ※ここはかなり微妙です。逆の結論になってもおかしくありません。 (2)以上より、Xの監禁行為とVの死の間には(33)が肯定され、Xは監禁致死の(34)を負う。 以上
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