1-25-0 刑法判例25-包括一罪と併合罪
(1) 事案(最決H22.3.17)
Xは、難病の子供たちの支援活動を装って、街頭募金の名の下に通行人から金をだまし取ろうと企てた。そこで、平成16年10月21日ころから同年12月22日ころまでの間、大阪市・堺市・京都市・神戸市・奈良市の各市内及びその周辺部各所の路上において、真実は、募金の名の下に集めた金について経費や人件費等を控除した残金の大半を自己の用途に費消する意思であるのに、これを隠して、虚偽広告等の手段によりアルバイトとして雇用した事情を知らない募金活動員らを上記各場所に配置した上、おおむね午前10時ころから午後9時ころまでの間、募金活動員らに、「幼い命を救おう!」「日本全国で約20万人の子供達が難病と戦っています」「特定非営利団体NPO緊急支援グループ」などと大書した立看板を立てさせた上、黄緑の蛍光色ジャンパーを着用させるとともに1箱ずつ募金箱を持たせ、「難病の子供たちを救うために募金に協力をお願いします。」などと連呼させるなどして、不特定多数の通行人に対し、NPOによる難病の子供たちへの支援を装った募金活動をさせ、寄付金が被告人らの個人的用途に費消されることなく難病の子供たちへの支援金に充てられるものと誤信した多数の通行人に、それぞれ1円から1万円までの現金を寄付させて、多数の通行人から総額約2480万円の現金をだまし取った。 そこで、Xに詐欺罪が成立するとしても、罪数処理として、併合罪となるのか、それとも包括一罪となるのかが争われた。
3 実践的書き方
第1 Xの罪責 1 詐欺罪(246条1項) Xは、複数の者から金員を受領しているが、その行為態様は類似するので、まず一人の被害者から受領した行為について検討する。 ※正確には募金活動員を用いていますが、概要でいいでしょう。 (1)(1) Xは、真実は募金の名の下に集めた金員の大半を自己の用途に費消する意思であるのに、これを秘して、募金活動員らに「難病の子供たちを救うために募金に協力をお願いします」などと連呼させているので、被害者を(2)(3)がある。 (2)錯誤 被害者は、Xの真の意思を知れば募金することはなかったと見られるが、自己が寄付した金員がXらの個人的用途に費消されることなく難病の子供たちへの支援に充てられると誤信しているから、(4)に陥っているといえる。 (3)処分行為・利益の移転・損害の発生 そして、被害者はこの錯誤に基づき、金員を寄付しており、Xは金員を得ているから、(5)と(6)の(7)、(8)の(9)が認められる。 (4)因果関係・故意 そして、上記の事情は(10)によって(11)され、Xはこれを(12)・(13)しているから、(14)が認められる。 (5)以上より、Xが各被害者から募金として金員を(15)する(16)につき、(17)が成立しうる。 (6)罪数 では、Xが上記行為を、募金活動員を用いて、(18)の通行人に対して行わせたことはどう評価すべきか。 この点は、(19)の(20)は(21)に(22)する(23)によって判断すべきであり、より具体的には、(24)の(25)を(26)に(27)すべきと解する。 ※ここは、一次規範と二次規範がかみ合っておらず、明確な判例もないので、二次規範も明記しました。 (あてはめ)そこで検討すると、確かに被害者は複数であり、被害の生じた場所もまちまちであり、(28)は単一ではない。 ※総合評価の際の「確かに~しかし~」の書き方。 しかし、募金は募金箱に入れられると直ちに(29)を(30)(31)するという特殊性がある。また、Xの複数の活動も、通行人から金員をだまし取ろうという(32)の(33)の下に、全く(34)の(35)でなされているから、(36)の(37)が認められる。 以上より、(38)は(39)するという(40)があり、また、(41)の(42)が認められることから、構成要件に該当する回数は1回であって、全体を(43)した(44)(45)が成立するというべきである。 ※論文の結論としては、どちらもあり得るでしょう。
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