1-12-0 刑法判例12-窃盗罪における実行の着手

(1) 事案(最判S40.3.9)  Xは、昭和38年11月27日午前0時40分頃、大阪府茨木市にある電気器具商A方店舗内に、窃盗の目的で侵入した。そして、所携の小型懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが判ったが、なるべくなら金を盗りたいので、現金が置いてあると思われる同店舗内のタバコ売場に近づき、金員を物色しようとした。  しかしその際、銭湯に行っていたAがたまたま帰宅したので、Xは一旦はタバコ陳列棚の陰に隠れたが、Aは出入口のガラス戸の一部が破られているのに気付き、その後潜んでいたXを発見した。そして、Aが「泥棒や」と騒ぎ出したため、Xは逮捕を免れるため、所携の果物ナイフでAの左前胸部を突き刺した。さらに、Aの近くにいたAの妻Bの顔面を手拳で強打する等の暴行を加えた。その結果、Aは失血死し、Bは加療約2週間を要する歯牙動揺等の傷害を負った。Xはなにもとらずに逃走した。  そこで、Xに、Aに対する強盗致死罪とBに対する強盗致傷罪が成立するかが争われた事案。



(3) 実践的書き方 1 住居侵入(130条前段)  Xは、A方という「(1)(2)」に、窃盗目的で立ち入っていることから、(3)Aの(4)(5)立ち入りといえ、「(6)」にあたる。 ※住居か、建造物かは、本件では事情が少ないが、住居としました。  したがって、A方への立ち入りにつき、(7)が成立する。 2 窃盗罪(235条) (1)Xは、A方店舗内のタバコ売り場に近づき、金員を物色しようとしているが、この時点で(8)(9)(10)があったといえるか。後の事後強盗致死・致傷の成否とも関連して問題となる。 (2)この点、(11)とは、(12)(13)(14)(15)(16)を有する行為をいう。  (あてはめ) そこで検討すると、XはA方内に侵入した後、なるべくなら金をとりたいと思い、現金が置いてあると思われる同店舗内のタバコ売り場に近づいている。(※Xの主観面を考慮している部分です。)このような行為計画に基づいて店舗内タバコ売り場に近づくことによって、現金を発見すれば直ちに(17)(18)(19))が行われるから、この時点で、窃盗の(20)(21)(22)(23)の高い行為が開始されたといえる。 ※ちょっと事情が少なく、評価しにくいですが… (3)よって、本件ではXに窃盗罪の実行の着手が認められる。 3 事後強盗罪(238条)  …(事後強盗罪の成否→成立)  …(財物奪取に失敗、しかし致死・致傷発生→既遂)

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