本件当時、A女(68歳)は長年にわたって、祈祷師として他人の病気を治すなどしながら生計を立てていた。Xは、信仰関係で知り合った、このAがかなりの金銭を貯え、何人かに融通していたことを知ったため、Aから数回にわたり合計約11万円を借り受けた(本件借金。なお、この借用書などは作成されず、Aに親族などの身寄りはなかった)。 しかしXは上記の金銭の返済をすることはほとんどなく、これに対して、AはXに対し不信の念を抱くようになった。AはXにしばしば本件借金の返済を催促していたが、最終的には「もうこれ以上だますと警察や信者にもばらす。」と強くXを責め立てた(本件催促)。 Xは本件催促により切羽詰まった結果、いっそ人目につかない場所でAを殺害することにより、本件借金の返還義務を免れようと企てた(本件計画)。 そしてXは、本件計画に従い、本件借金の返済のためと称してAと共に外出し、人家がなく人通りの少ない道路上に差しかかった際、Xは突然、薪様の凶器にてAの頭部等を数回殴打した(本件暴行)。Aは本件暴行により、頭部、顔等に多数の傷を負い、昏倒した。 XはAが即死したものと思い、そのままその場を立ち去った。しかし、本件暴行は致命傷に至らなかったため、Aは死亡しなかった。Xの罪責は。
第1 強盗殺人未遂(刑法236条2項、240条、243条) 1 暴行・脅迫 本件で、XはAの頭部等を薪様の凶器にて数回殴打している。 Aが高齢(当時68歳)の女性であることをも考えると、Xのこの行為は、社会通念上、Aの(1)を(2)する(3)であると言えるから、236条1項にいう「(4)」にあたる。 2 財産上の利益を得たか (1)もっともXは、Aを殺害することにより、本件借金の(5)を免れようとしていることから、これが(6)の(7)を(8)といえるかが問題となる(同条2項)。 そこで検討すると、まず前提として、本件でAに(9)は認められないが、1項強盗との均衡から、(10)の(11)を(12)といえるために(13)は(14)と解する。そして、(15)の法定刑の重さにかんがみ、(16)の(17)を(18)(19)ならしめたとみられる事情がある場合に、(20)の(21)を(22)といえると解する。 (2)これを本件についてみると、本件借金に借用書は作成されておらず、Aに身寄りとなる親族はいないから、XがAを殺害すれば、(23)の(24)を(25)(26)ならしめたとみられる事情があるといえる。 以上より、本件では(Aの殺害に成功すれば)(27)の(28)を(29)といえると考える。 3 その他 さらにXには、本件計画から、(30)の(31)を(32)(33)や(34)の(35)も認められる。したがって、本件ではXに(36)(236条2項)が成立しうる。 4 強盗殺人罪・未遂罪 (1)(XはA殺害の故意あり、着手あり→認定) (2)(強盗殺人既遂・未遂の判断基準の論点→殺害結果の有無で判断→本件では未遂) 5 結論 (強盗殺人未遂罪が成立)
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