Xは、千葉県にあるスーパー「A」店内において、買物かごに入れた商品35点をレジで代金を支払うことなく持ち帰って窃取しようと考えた。そこで、レジの脇のパン棚の脇から、約5分ほど店員の様子を伺い、隙を見て、買物かごをレジの外側に持ち出し、これをカウンター(サッカー台)の上に置いた。そして、同店備付けのビニール袋に商品を移そうとしたところを、店員に取り押えられた。 Xに窃盗罪が成立するか。
第1 Xの罪責 1 窃盗罪(235条) (1)Xは、A店内の商品という「他人の財物」を、レジの外側に持ち出している。そこで、「窃取」したといえるか。商品をレジの外側に持ち出すことは、窃盗という結果発生の直接的・現実的危険性を有する行為なので、少なくとも着手はあったものと認められるが、さらに既遂に達したといえるかが問題となる。 ※理論的には実行の着手が先行するが、本問で認定は必要か…? この点、窃盗とは他人の財物の占有を奪取する罪であることから、その既遂時期は、他人の意思に反して占有を排除し、財物を自己の占有に移した時点であると解する。 (2)そこで検討すると、確かにXはいまだサッカー台の上に商品を置いたにとどまるから、占有はXの下に移転していないようにも思える。しかし、買物かごに商品を入れたXがレジの外側に出ると、代金を支払ってレジの外側へ出た他の買物客と外観上区別がつかなくなり、Xが最終的に商品を取得する可能性が非常に高まる。したがって、この時点で、店舗の占有は排除され、Xに占有が移転したといえる。 ※「非常に高まる、したがって占有が移転した」では、ちょっと唐突なので、「店舗の占有が排除された」という、定義であり評価でもある一文を入れました。 (3)以上より、Xは本件商品35点を「窃取した」と言え、故意と不法領得の意思も認められるので、Xには本件商品35点に対する窃盗罪が成立し、包括して一罪となる。 ※問題のない要件はこれでもいいでしょう。
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