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1-42-0 刑法判例42-恐喝と権利行使

(1) 事案(最判S30.10.14)

Xは、昭和20年9月頃、Aとともに東邦建設公社名義で土木建築請負業を始め、昭和22年5月頃にAらと東邦建築興行株式会社を創立し、社長であるAの下で専務取締役となった。しかし、その後Aと不仲になり昭和23年1、2月頃同社を退くにあたり、Aに対してXが会社のため金18万円位を出資したと主張し、Aはこれを否定して争ったが、結局Aから18万円の支払を受けることになり内金15万円の支払を受けた。ところが、Aが残金3万円の支払をしなかったため、Xは友人Yに事情を述べてAからの金員の取立てを依頼した。X・Y、そしてYの友人2名を合わせた4名は、共謀のうえ残金をAより取り立て、かつ、Aから金員を喝取しようと企て、Aが要求に応じないときはAの身体に危害を加えるような態度を示し、Aに対しYらは「俺達の顔を立てろ」等と申し向けた。Aは、もし要求に応じない時は自己の身体に危害を加えられるかもしれないと畏怖し、残金3万円を含む6万円をXに交付した。 そこで、Xらに6万円全額について恐喝罪が成立しないかが争われた事案。





3 実践的書き方

第1 Xの罪責 ※詐欺罪の場合と同様に書いてみました 1 恐喝罪(249条1項) (1)XはAという「人」に対し、身体に危害を加えるような態度を示しているので、人を畏怖させる程度の脅迫を加えたといえ、「恐喝して」にあたりうる。 ※損害がない場合は「恐喝して」にあたらないとする理解を前提にしています。 (2)そしてAは畏怖した上、6万円という財物をXに交付しているが、XはもともとAから3万円を受け取る権限を有していたものと認められるので、3万円については損害がなく、「恐喝して」と言えないのではないか。 ※「畏怖」と「交付」は先に認定 この点については、被害者が畏怖しなければ交付しなかったと認められる場合、原則として全額が恐喝罪となるが、当該権利行使の方法が社会通念上許容される程度であれば、違法性が阻却されると解する。なぜなら、相手方を畏怖させてまで権利を行使するのは、権利の濫用と考えられるからである。 ※理由部分は通常不要でしょう これを本件についてみると、Aは従前3万円の支払いをしていなかったのだから、Aが畏怖しなければ本件の6万円も交付しなかったものと認められる。また、XはAの身体に危害を加えるような態度を示し、Yらも合わせて4人がかりでAひとりに「俺達の顔を立てろ」等と申し向けているので、権利行使の方法が社会通念上許容される程度であるとは言えない。 したがって、Xは6万円全額について「恐喝した」といえる。 (3)そして、Xには故意および不法領得の意思が認められ、全体が因果関係に包摂されているので、Xには6万円全額について恐喝罪が成立する。 以上

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