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1-10-0 刑法判例10-覚せい剤営利目的輸入罪の故意

1 覚せい剤営利目的輸入罪の故意

(1) 事案(大阪高判H30.5.25)

香港在住のXは携帯電話販売店の店員として働いていたが、氏名不詳者(以下、Aらという)から「海外に荷物を運ぶ仕事」を依頼され、本件スーツケースの運搬を4万香港ドル(当時の価値にして55万8800円。ちなみにXの月給は1万1000香港ドルだった)で引き受けた(本件依頼)。 Xは、AのパートナーだというBから、「関税をまぬかれるため、金塊が隠されている」と説明を受けて本件スーツケースを受け取ったが、自ら中身を確認はしなかった。 なおXは、過去に中国本土に粉ミルクや漢方薬などを運ぶ仕事をしたことがあったが、その際の報酬は300~800香港ドルであった。 Xは、日本の関西国際空港において、香港発のD航空機から本件スーツケースを搬出させた後、禁制品の輸入の申告などをせず、これを受け取ろうとした。 しかし本件スーツケースは、税関検査の結果、内張の下に覚せい剤が隠されていることが発見されたため、Xは覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)と、関税法違反(禁制品輸入未遂)で逮捕、起訴された。 Xに覚せい剤営利目的輸入罪の故意が認められるか。





(4) 実践的書き方

※小問形式で、覚せい剤営利目的輸入罪の故意だけを聞かれたような場合を想定して構成してみました(同罪は特別法なので)。また、「営利の目的」については省略します。

第1 覚せい剤営利目的輸入罪の故意 1 故意とは、(1)となる(2)を(3)・(4)することをいい、その内容としては、(5)の(6)で足りると解する。 次に、覚せい剤営利目的輸入罪の(7)の内容としてどのようなものが必要かが問題となるが、法律で輸入を規制されている薬物には多種多様なものがあることから、当該薬物の(8)まで知っていることは必要なく、覚せい剤を含む(9)に(10)で(11)な(12)であるとの(13)があったことで足りると解する。 2(1)本件では、Aらは面識のないXに相当高額の報酬を用意して、スーツケースの中に隠せる程度の物品の運搬を依頼している。そして、Xは過去にも海外に荷物を運ぶ仕事をしたことがあり、(14)の(15)をも身に付けていると考えられるから、これが覚せい剤を含む違法な薬物であった(16)の(17)・(18)があったと認められる。 ※なるべく設例の事情を使って書き、「推認」などは使わず書きました。 (2)なおこの点、もしもXが、Bから言われた通り「中身は金塊である」と(19)信じていた場合は、上記(20)・(21)がなかったと考えられるが、Xは自ら本件スーツケースの中身を確認することはなかったのであり、このように信じていたとは認められない。 3 以上より、Xには覚せい剤営利目的輸入罪の故意が認められると考える。

※回答内容が保存され、問題作成者が閲覧できます