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●ステンレス鋼の基本的な性質・用途

クロムとニッケルの合金は、実用金属の中でも【(1)】が最大とも言われており、同時に熱伝導率が極めて低いのが特徴である。この特性を活かした合金鋼の一つが当該元素を多く含むオーステナイト系ステンレスである。特に高温環境下での強度が大きく、高温加熱時でも高い【(2)】を維持できるため、耐食鋼としてだけでなく耐熱鋼としても高い溶接性を備えているのが特徴であり、さらには【耐低温脆性】にも非常に優れ、亀裂や割れなどの損傷が発生しにくいため、液化冷媒や溶接用シールドガスのタンク・容器などにも使用されている。

一方、オーステナイト系ステンレスは、他のステンレス鋼と異なり【磁性】が極めて小さいことも利点の一つと言われており、電気装置のハウジング、電子・通信用部品の基盤のほか、各種モーター系部品にも採用されているが、常温でオーステナイト相が残留、成形されるため【焼入性】が極めて小さいという欠点も併せ持っており、例えば切削用工具、ベアリング、強靭ボルトなどの用途にはマルテンサイト系のステンレスが使用されるのが一般的である。

オーステナイト系ステンレスは、一般に【”SUS304”】と表示されるものが圧倒的に多く、これが標準的な鋼種を表す代名詞として、各種自動車用部品や外板・内板部材にも多用されているが、自動車用鋼種としてはさらに特異な性質を備えている。それは、外部から大きな衝撃を受けると内部組織がマルテンサイトに常温変態し性質が大きく変化するというものである。結果、顕著な塑性変形を示し、衝撃吸収性と引張強さの向上という2つの側面を併せ持つことが可能であり、この性質を利用して実用化された自動車用鋼板が【TRIP鋼板】と呼ばれるステンレス鋼をベースとした場合のハイテン材である。



●アルミ溶接と溶接後の欠陥現象などについて

アルミニウムは【電気抵抗】が鉄の約4分の1程度と低いため、アルミ合金鋼の突き合わせ溶接では、通常、シールドガスを利用したアーク溶接により行われるのが一般的であるが、【熱容量】は小さいため、溶接周辺部への熱影響には十分に留意が必要である。

代表的なアーク溶接技法の一つが直流を利用した【MIG溶接】である。電極を「+」にすることで母材側の発熱を下げて溶込みを浅くできるとともに、アークの【洗浄作用】を利用してアルミ表面の酸化皮膜を除去することができるため、非常に効果的な手法の一つである。

また【TIG溶接】では交流を使用するのが一般的であり。電極が「+」になれば、アークの (洗浄作用)を利用でき、母材側が「+」になれば一定の入熱を加えることが可能である。

ただし作業にあたり留意すべき事項の一つが【低温割れ】と呼ばれる欠陥現象である。溶接個所と熱影響部の境界線付近で発生することが多く、アルミ合金の中に【融点】が低い元素が含有されているとき、当該元素が析出した状態で冷却・凝固が始まり、溶融金属の最終凝固部が完全に凝固していない状態で収縮することによるものである。

また【ブローホール】と呼ばれる欠陥も発生しやすい現象の一つである。主として水素に起因して発生し、その原因は溶融アルミニウム中の水素の溶解度が凝固時に極端に減少することに因るものである。溶接時は空気中の水分を巻き込むことが多く、湿度の高い大気中での溶接作業をできるだけ回避することや、シールドガス流量や流速に留意し、シールドガスの壁に隙間を作らないなどの対策が有効である。



●自動車用鋼板について

モノコックボデーは、外力をボデー全体に分散させることで剛性を維持する構造である。「剛性」 とは変形のしにくさを表す物理指標であり、これと最も関係が深いのが【ヤング率】の値である。 この値は材料の比重(密度)に比例するため、冷間圧延鋼材であればその値はほとんど同じである。 したがって、例えばフロアパネルペルーフパネルなど、永久ひずみの発生(剛性の低下)が極端に嫌われる部位では高張力鋼板による薄肉化が期待できないため、例えば軟鋼などの能性材料が使用され、一般に【降伏点】を基準強さとして許容応力を決められている。一方、パンパリインホースメント、フロント・センタピラー、ロッカパネル部などは、弾性変形を前提に衝撃力をボディ全体に分散する役割を担うとともに、外力の作用により永久ひずみが発生しても、外力を取り除けば以前よりも高い【弾性限度】を維持しながらより降伏しがたい材料へ変化できるだけの抵抗力を備えているため、例えば加工性冷間圧延高張力鋼板による薄肉化が期待でき、一般に【引張強さ】を基準強さとして許容応力が決められている。

またサイドメンバのように、停止・走行中を問わず常に大きな集中荷重を受ける水平部材では、【曲げ応力】が作用する断面が応力の最大値であり危険断面となるため、これに配慮して加工性冷間圧延高張力鋼板の種類が決定されるが、走行中の加減速による繰返荷重を受ける部材であることに配慮すれば、材料自体が決して破断しないよう、基準強さに【疲労限度】を採用し、この値ができるだけ大きくなるよう許容応力が決められる場合もある。



●自動車用各種鋼材(JIS規格ベース)の基本特性、用途などについて

自動車用各種鋼材の中でも、機械構造用の代表的な熱間炭素鋼材の一つが【SC材】である。含有炭素量で区分され、主に焼入れなどの熱処理を施して使用することを前提に、硬度や耐摩耗性に優れた軸受、歯車などの機械部品用に多く使用されている。

一方同じ熱間材でも含有炭素量では区分されず、主に引張強さと伸び特性で区分されているのが【SPHC材】と【SPFH材】である。前者は、鋼の変態点付近の温度で加熱された状態のまま圧延され、その後簡単な曲げ加工により多くのフレーム・シャシ材料に多く採用されている一般圧延用の鋼板である。また後者は、内板部材としてさらに高い引張強さやプレス成型性が求められる各種メンバ類に多く採用されているのが特徴であり、その引張強さの下限値は490MPaである。



●JIS規格ベースに基づく各種自動車用鋼板の特性(比較特性を含む)について

自動車用加工性冷開圧延高張力鋼板(SPFC: JIS規格表示)の最低引張強さは【340MPa】、一方、自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板(SPPH 同規格表示)の最低引張強さは【490MPa】 であり、それぞれ高張力開板としての規定を充たす最低限度の引張強さを保証した鋼板であるが、 特にSPFC材は、引張強さが小さい鋼板ほど【伸び特性】に優れるため、適用では、「絞り加工用」に区分されるのが特徴である。

さらに、両材は共に【ヤング率】の値はほとんど同じであるため、板材としての「剛性」に差はないが、同じ引張強さの両材と比較すると、SPFC材の方は【降伏比】の値がおおよそ60%を遥かに小さく、帰性・塑性の全領域における負荷荷重に耐えうる許容応力の範囲が広いため、 が求められる外板・内板部材には最適である。

また、共通した用途に使用されることの多いSPFC材を冷間圧延鋼板(SPC)と比較すると、仮に板厚が同じでも、前者は後者に比べて引張強さが大きく、またこれに比例して【降伏強度(耐力)】のも大きくなるため、軽量化が可能であるとともに、引張強さの大きい材料ほど局所的な打痕に対する【耐デント性】に優れるとともに、成形時の加工硬化特性も良好であるという利点を備えている。



●自動車に使用されている高強度鋼板(含む高張力鋼板)に関した説明文

DT鋼板とTRIP鋼板は、高延性合組織力鋼板を代表する鋼種であり、2つの鋼板の共通する特徴は、ともに内部の異なる複数の層で構成され、【降伏比】が小さく伸び特性(延性)に優れ、高負荷が極めて広いことである。

DT鋼板は、主にマルテンサイト層(硬質層)とフェライト層(軟質層)の複合組織を、またTRIP鋼板は、さらにベイナイト(硬軟質層)が加わるため、冷間材であっても成形時の【加工特性】が極めて良好であり、また外力に対しては【衝撃特性】に優れるという特性を備えている。これは軟質層が成形時や事故発生時に鋼板の「変形」を受け持っためであるが、特にTRIP鋼板についでは、外力に対して【変態誘起塑性】と呼ばれる特異な能力を備えているのが特徴である。これは常温時に鋼材内部にオーステナイト組織を意図的に残し、ここに力を加えて硬質なマルテンサイト相織に変化させるという手法を活用したものであり、変形した部分は強度が上がり変形しにくくなるため、結果として他の部分が変形しやすくなり、最終的に部材全体が均一に変形し伸びが増加するという仕組みである。複合組織を持つこれらの鋼板は、このような特性を活かし、各種外板パネル、メンバ、ピラーなどの冷間材として、また繰返しの負荷による応力集中が原因となる亀裂が発生、伝播しにくく、【疲労限度】が極めて高く材料が破断しにくいため、サスペンショシアームや各種ホイール周辺部材、床下部材など熱間材にも多く採用されている。

一方、このような複合組織の生成を可能としている代表的な成形手法が、一般に【高周波焼入れ】と呼ばれる硬化法である、この方法は、【電磁誘導】の原理を利用し、金属材料の表面層を発熱させることでその硬度を高める手法であるが、材料の一部だけを加熱・冷却したり、加熱する深度を自由に調整できるため。部分的に異なる組織を生成するのに最適である。

また複合組織の一つであるペイナイト層は、一般に【等温変態】と呼ばれる熱処理法により生成さお、焼入れによる変更が生じる湿度を一定時間保持することで極めて粘り強い組織を有するのが特徴である。

ただし、このような複合組織は唯一【フランジ性形成】に劣るという欠点をもっている。複合組織が局部的な伸びの成形を妨げるからであり、したがって、バーリングや穴広げ加工に代表されるような成形所については、こうした点を配慮し、ベイナイトを単相で用いるなどの措置が講じられている。 また、こうした鋼板は、さらにメッキ層で表面を保護する塗装対策が施されており、一般に【GA鋼板】と呼ばれる表面処理鋼板としてよく知られている。事後の熱処理で通常の溶融亜鉛メッキ鋼板の県内に鉄成分を拡散させてメッキ層を形成する手法であり、メッキ層の談厚化を可能にし、加工時のメッキ層の剥離を防ぎ、防錆に加え溶接性を向上させる役割も担っている。



●自動車用鋼板について

「SPC#」表示の鋼板の中で、特に深絞り用の極低炭素鋼板である「SPCE」は必要不可欠な鋼種の一つとされている。ただし、降伏点伸びが大きく、また冷間圧延後は他の鋼種に比べて【自然時効】が発生しやすいため、伸びの不均一性や合金元素の偏析などにより歪みやしわが発生しないよう軽い調質圧延を行う対策が採られており、その後の熱処理(調質処理)では【焼戻し温度】を高めに設定し、硬度や降伏点を減少させて伸び特性や粘り強さを確保しているのが特徴である。 一方、「SPCE」よりも板厚の範囲が狭くその厚みが薄いにもかかわらず、「SPCE」に迫る伸び特性を確保しているのが「SPFC340」である。ハイテン材の中では最も引張強さが小さい鋼板であり、 【降伏比】の値が0.5と非常に小さく、塑性変形能力や衝撃特性に優れ、衝突時の安全性能が極めての高いのが特徴である。この値が大きいと、【弾性限度】を維持したまま材料が急激に引きちぎもれるように破壊するため非常に危険である。

また、「SPFC」を主体に、この絞り特性をさらに高いレベルで実現しているのがDP鋼板やTRIP 鋼板と呼ばれる鋼種である。両者とも部分的に焼入れ深度を変えることで意図的に複合組織とした鋼種であり、特に後者は【変態誘起塑性】と呼ばれる特異な能力を備えているため、衝突による鋼板の【均一変形性】が極めて良好なのが特徴である。

ただし、両鋼種とも、材料を部分的に局所加工する精度には劣る面があり、これを可能としている鋼板が一般にベイナイト鋼と呼ばれる鋼種である。【等温変態】と呼ばれる熱処理により成形されるのが特徴であり、バーリング加工や穴広げフランジ加工など、局部的な絞り加工でも材料を破断させることなく成形できるのが特徴である。



●自動車用鋼板について

高張力鋼板に求められる特性は、主に【耐デント性】と【耐衝撃性】であり、両者とも降伏点(体力)の値と密接に関連しているが、前者は主にフード、ドアパネル、トランクリッドなど、外板パネルに求められる特性であり、引張強さに加え、降伏点(体力)と【ヤング率】も所定の大きさが必要となる剛性の高い材料でなければならず、例えばBH鋼板はその代表的な一例である。鋼板のプレス時の応力集中による内部歪を作り出し、その周辺に炭素や窒素を転位、固着させて強度を向上させようという【事項効果特性】を利用したものである。

一方、後者はバンパ補強材、ピラー、メンバ類など、パネルに求められる特性であり、疲労特性や変形特性が要求されるものでなければならない。これについては低い【降伏比】が確保できる鋼板でなければならない。それは、所定の外力が加えられても引張強度に達するまでに高い【加工硬化性】を維持できるとともに、破断に至るまでにおおきな【靭性】を確保し粘り強さが高まるよう塑性行に余裕がある状態が必要だからであり、これらを充たしている最も代表的な鋼板がDP鋼板とTRIP鋼板である。

前者は熱処理硬化を部分的に行い軟質なフェライト層を残すことによる【絞り性】を重視した鋼板であり、また後者は、常温でもマルテンサイトに変化するオーステナイトを残留させた鋼板であり、受けた衝撃の程度に応じて効果が上昇していく鋼の【変態誘起塑性】と呼ばれる変態を利用したものである。極めて伸び特性に優れており、強度と伸びのバランスが良好であるため、高いエネルギ吸収性と強度の維持という両面性の性質を併せ持っている。



●JIS規格ベースに基づく各種自動車用鋼板について

熱間圧延軟鋼板は、引張強度270MPa以上の鋼板が板厚に応じた【伸び率】により区分されており、自動車用鋼板として使用される板厚の標準範囲はおおよそ【1.2~14.0㎜】である。成形性心加工精度は冷間圧延鋼板よりも劣るが、加工後の【残留応力】が少なく、サスペンション関連部品やメンバなど冷間圧延鋼板以上に板厚が求められる箇所に多く採用されている。

一方、引張強度が【490MPa】以上の熱間圧延軟鋼板を自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板と呼び、主に引張強度と【降伏強度】の違いにより区分され、「加工用」と「高加工用」に大別されている。

また、引張強度が上記2種類の中間に位置しているのがJIS規格で【”SAPH”】と表示される自動車構造用熱間圧延鋼板である。引張強度が熱間圧延軟鋼板よりも大きく自動車用加工性熱問圧延高張力鋼板よりも小さい【310~440MPa】の間で計4種類が規定されている。 強度に加えプレス成形性の良さを併せ持っているのが特徴であり、主にフレーム材として自動車用熱間材のおおよそ30%を占めている。

これに対し、冷間圧延鋼板は、低炭素鋼に相当する軟鋼板であり、プレス成形性や表状性(表面の仕上がり精度)に優れており、自動車用鋼板として使用される板厚の標準範囲はおおよそ【0.6~2.3㎜】である。熱間圧延軟鋼板と同様、270MPa以上の鋼板が板厚に応じた【伸び率】により区分され、用途に応じ「一般用」、「絞り用」および「深絞り用」に大別され、主に自動車用外板パネルや展伸材として多く採用されている。

また、この冷間圧延鋼板の上位に位置するのが自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板である。引張強度が【340MPa】以上の冷間圧延鋼板をいい、自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板と同様、 主に引張強度と【降伏強度】の違いにより区分され「絞り加工用」と「加工用」に大別されている。

一方、ドア、フード、フェンダ、トランクリッドなど、外板パネルに必要な引張強度、剛性および耐デント性をできるだけ両立させる目的で開発された鋼板の一つがBH鋼板である。通常、車体剛性は使用する部材の【ヤング率】や板厚に比例し、また引張強度や耐デント性は【弾性限度】に比例して大きくなるが、これでは鋼板の薄肉化が困難である。強度が高く肉厚の状態ではプレス成形時に面ひずみが生じて高い面精度を確保することができないため、加工時は柔軟性に富んだ鋼板をプレス成形後の【ひずみ時効硬化】という現象を活用しこの問題を解決したのがBH鋼板である。 具体的には、プレス成形後の【焼付け塗装】の熱によって鋼板中に固溶状態で残留する炭素と窒素を転位させて【降伏強度】を上昇させる手法である。

なお、鋼板同士の比較特性を見ると、自動車用加工性冷間,熱間圧延高張力鋼板の2つについては、引張強度が同じあれば、前者の方が後者よりも降伏強度が低く、結果として【降伏比】の値が小さいため、塑性域における負荷荷重、すなわち破断に至るまでの許容応力の範囲が広いため【衝撃吸収性】が高いのが最大の特徴である。

また、冷間圧延鋼板と自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板の2つを比較すると、両者はともに【ヤング率】の値も板厚の標準範囲もほぼ同じであるため、どちらを使用しても車体剛性には大差がないことを把握しておくことが重要であり、後者をいくら多く使用しても車体剛性はまったく向上しない。後者が前者よりも優れているのは、板厚を薄くしても高い【引張強度】と【降伏強度】を備えているため、荷重を負担できる塑性域に余裕があることであり、重量増加を抑えながら強度と衝撃吸収性を高め安全性をより向上させている点である。

「SPC#」で表示される自動車用鋼板は、通常、外板用低炭素薄板鋼として使用されており、常温で圧延した後、過度に加工硬化した鋼板に対して展延性や被削性を回復させ再加工に備えるため、先ずは【焼きなまし】処理を行い、その後は薄板の表面性状(厚さの均一性)を向上させ、併せて圧縮・引張によるシワを伸ばす目的から、軽めの【調質圧延処理】を施して全体の硬度調整を行うのが一般的である。また実使用にあたっては、その後熱処理として【調質処理】を行い鋼内部の靭性の回復が図られているが、このとき【焼き戻し】温度が高いほど硬度や降伏点が減少するため、粘り強さが求められる場合には比較的高い温度で、また耐摩耗性が必要とされる場合には比較的低い温度で行うのが一般的である。

鋼種は、「SPCC」、「SPCD」、「SPCE」の3種である。3種の中では「SPCE」は【降伏比】の値が最も小さく、成形時の伸び率は【40】%以上が求められ、また厚みが大きい鋼板ほど伸び特性に優れているため、自動車用深絞り成形材料として外板系部材や機能部品などに多く使用されている。

一方、「SPH#」で表示される自動車用鋼板は、「SPC#」と異なり圧延は高温で行われるが、【質量効果】が大きく焼入性には劣るため、通常、【焼きならし】による熱処理で組織を標準化し再加工に備えるだけである。

鋼種は、「SPHC」、「SPHD」、「SPHE」の3種であり、用途区分は「SPC#」と同じである。例えば「SPHC」 で表示される鋼板は、主に【曲げ】加工のみで製品化できる一般用部材として自動車用各種フレーム材やシャシ系部品に多く使用されており、また「SPHE」は深絞り用成形部材として比較的大型の内骨系部材、足回り用部品、機能部品などに使用されており、加工精度は冷間材に及ばないものの、加工硬化による【残留応力】が非常に少ないため、集中荷重を継続して受ける部材・部材でも安定した内部組織を継続して維持できるなどの利点を備えている。



アルミニウム合金は、同じ実用軽金属の中でも、マグネシウムやチタンなどと異なり冷間加工による成形性が極めて良好な金属である。例えば、非熱処理型のA4000番台(JIS規格表示、以下の材質記号も同じ。)に属する展伸用アルミ合金材は、【冷間鍛造】用として極めて高い強度が維持でき、熱膨張・収縮がなく寸法精度と耐熱性の高さは他の加工法を圧倒的に凌駕しており、 エンジン関連部品として多くが採用されている。一方、同じ非熱処理型合金でも A3000番台に属する合金材は、主に【押し出し加工】用として使用されることが多い展伸材である。この加工は一度だけの圧縮工程で異形断面や中空断面まで多用な形状が得られるのが特徴であり、また主にマンガン(Mm)を合金元素に含むため、加工性と耐食性を犠牲にすることなく【引張強さ】だけを高めているのが特徴であり、各種チューブやショックアブソーバのシリンダなどのほか、ヒートインシュレータ、熱交換器用部材にも採用されている。さらに、A5000番台に属する合金材は、主にマグネシウム (Mg)を合金元素に多く含むため、非熱処理型の中では単位質量あたり最高の【比強度】を備える軽量型構造用展伸材であり、車体用バネル用材料のほかホイール用材料としても採用されている。いずれの場合も、アルミニウムは、鋼にみられるような【低温脆化】の性質を示さず、冷間温度を下げて加工しても引張強さや耐力が低下しないという特異な性質をもっており、加工成形にあたってはこれが利点の一つになっている。

一方、A6000番台に属する展伸用アルミ合金材は、代表的な熱処理型合金である。【時効硬化】処理によりその機械的性質の改善を図り強度を維持できるため、工業的利用価値の極めて高い材料であり、車体用パネル材料として多く採用されている。また、マグネシウム (Mg) とケイ素(Si)を合金元素に多く含むため【塗装焼付硬化性】が高く、プレス成形や曲げ加工時には高い成形性を確保し、成形後には高い耐力を確保できるのが特徴である。



金属表面処理方法のうち、最も普及している方法の一つが浸炭処理と窒化処理である。浸炭処理は主に【低炭素合金鋼】を対象に行われ、ガスを利用した方法が最も多く採用され、CoやH2を多く含む炭化水素ガスが必要であるため、使用するガスの多くは【ブタン】や【プロパン】である。 浸炭処理の目的は、表面の硬度だけを高め、内部は靭性の高いままに維持することであるが、最終工程では【焼き入れ】を行う必要があるため、過度の熱処理は【表面脆性】を高め破損を招く可能性があり、この点では【焼き入れ】をまったく必要としない窒化処理の方がはるかに有利である。 窒化処理は、浸炭のように鋼の組織を変えることによって硬度を高めるのではなく、低温下において【アンモニア】の雰囲気中で高い硬度の化合物を作ることによって表面を硬化させる処理である。

【硬化深度】が浅く、熱歪みが小さいのが特徴で、クランクシャフト、カムシャフト、バルブリフタなど、比較的柔らかい鋼の表面のかじりを防ぎ、摩擦抵抗を減らして【疲労限度】を向上させ、 材料の破壊を回避させるための代表的な表面硬化加工法である。特に窒素は、【Al】や【Cr】などの金属と親和性が強く、当該金属を含む合金鋼の表面処理には最も有利とされている。

また、浸炭・窒化に次いで多く採用されている表面処理法の一つが高周波焼入れであり、焼入れ硬化を高めるため、【半鋼鉄・鋼鉄】を対象に行われることが多い。【焼戻し】の効果を十分に活かすため、最初に調質処理を施して炭素合金鋼の靭性を十分に回復させた後、当該合金鋼をコイルの中に入れ、【電磁誘導】の原理を利用し材料をオーステナイト状態まで加熱して焼き入れる方法である。直接加熱した箇所の硬度だけを高めることが可能であり、また硬化層の深さを自由に調整できるという利点があるため、軸受部品を中心に、機械部品の摺動部位に多く採用されているほか、 複合組織型高張力鋼板 (DP鋼板など)など、異なる変態層を備える鋼板の熱処理にも不可欠とされている処理方法である。

一方、同じ加熱でも、金属表面の特定箇所だけを加熱し、同時に【自己冷却】作用を利用して焼入れを行うのが電子ビーム焼入れやレーザ焼入れであり、その特徴は、複雑な形状の部品であっても、その一部分だけを局所的に加熱することを可能としている点である。ただし、電子ビーム焼入れは、レーザ焼入れに比べるとエネルギ密度が小さいため、【減圧雰囲気中】で行う必要があり、エンジンのバルブやピストンリングを始め、トランスミッション用歯車の歯焼きなど、比較的小部品の製造を大量に行う場合に適した方法であるのに対し、レーザ焼入れは大気中でも処理が可能であるため、比較的大型の部品に適用されている。

なお、以上は金属の物理的特性を活かした例であるが、化学的特性を利用した代表的な方法の一つが陽極酸化処理法である。

この手法は、対象となる金属を陽極につないで酸の水溶液を電解したとき、本来なら陽極から気泡となって発生する酸素が、金属の種類によっては金属自体と急速に結合することで発生しないという原理を利用したものであり、あえて「陽極酸化」の呼称が付けられている。アルマイト処理はその代表的な手法の一つであり、耐摩耗性と耐食性を向上させる目的で行われ、最初に薄いバリヤ層が、その上には【電気絶縁性】の高い多孔層が形成されるのが特徴である。

※回答内容が保存され、問題作成者が閲覧できます