1-08-0 刑法判例8-故意犯と原因において自由な行為

1 故意犯と原因において自由な行為

(1) 事案(大阪地判S51.3.4)

被告人Xは、清酒に換算して5、6合ほど飲酒すれば他人に対する暴力衝動を押さえがたくなり、暴力をふるうことが多いという性癖を持っていた。Xとしては酔いが覚めた後、近親者からその狼藉を告げられるなどしてその非を知るところではあった。そして、昭和48年2月には、窃盗、住居侵入、強盗未遂等の各罪により有罪判決を受けることとなったが、その内容として「飲酒による複雑酩酊のため心神耗弱の状態にあった」と認定された上で保護観察付執行猶予4年の処分とされ、さらに裁判官から特別遵守事項として禁酒を命ぜられた。 しかし、昭和49年6月に至って、またもXは飲酒するに至り、午後10時ころ、病的酩酊(心神喪失)となった状態で、飯場から牛刀を持ち出し、市内を徘徊した後にタクシーを停車させて乗車した。 そして、タクシーを大阪市内方面に向かって走行させる途中、運転中の運転手Vの左手首を左手で掴んで後に引張り、右手に持った牛刀をVにつきつけながら、「金を出せ。」と申し向ける等の暴行脅迫を加えた。 その後、Vはすきを見て車外に飛び出して逃走したが、金員入り革製大型がま口を助手席に置いたまま逃走した。なお、Xはこれを奪取せず現場を離脱している。 Xはいかなる罪責を負うか。





(3) 実践的書き方

1 強盗罪(236条1項) (1)Xはタクシーを運転中のVに対し牛刀を突き付けながら、「金を出せ」と申し向けているので、(1)(2)するに(3)(4)(5)を行っているといえ、強盗罪の実行の着手が認められる。 (2)(6)において(7)(8) もっとも、この時点(結果行為時)でXは心身喪失状態にあったことから、形式的に39条1項を適用すると処罰できないことになるが、いかに解すべきかが問題となる。 ア この点、(9)の自分を(10)として利用したと説明できる場合に処罰すべきと解する説もあるが、実行の(11)が早すぎて妥当でない。 ※反対説批判部分は、省略可能 イ そこで、そもそも「(12)(13)(14)の原則」とは、(15)ある状態での(16)に基づいて(17)を実現しているから責任を問えるという点に根拠があることから、ある(18)が一つの(19)に貫かれており、その(20)(21)のある状態でなされていれば、行為者は(22)について(23)を負うと解すべきである。 ウ (あてはめ)そこで検討すると、Xは飲酒開始時点((24))において(25)(26)を有していたとまでは認められず、(27)が一つの(28)に貫かれていたとは言えない。 ※事情が少ないのであてはめが難しいですが… (3)したがって、Xを強盗(未遂を含む)罪に問うことはできない。 2 脅迫罪(222条1項) (1)もっとも、脅迫罪についてはどうか。同じく(29)において(30)(31)の理論の適用が問題となる。 ア (あてはめ)そこで検討すると、 Xは従前、飲酒すれば他人に対し暴力をふるうことが多いという性癖を持っており、X自身も自らの性癖を知っていたと認められる。しかも、Xは本件の前年には飲酒したうえでの強盗未遂等の有罪判決を受けており、禁酒を命じられたにもかかわらず、これに違反して飲酒している。したがって、少なくとも他人に対して(32)(33)を加えることがあるかもしれないことについては、飲酒開始時点において(34)(35)があったと認められる。 ※同じ理論のあてはめになるので、問題になりそうな要件から先に検討しました。 イ したがって、(36)から(37)まで、(38)(39)(40)(41)(42)という一つの(43)に貫かれており、かつその(44)(45)ある(46)になされているから、脅迫罪については39条1項の適用はない。 ※自分の立てた規範に当てはめて結論を出すこと (2)そして、XがVに対し牛刀を突き付けながら、「金を出せ」と申し向けている点は、(47)(48)に対し(49)(50)旨を(51)(52)して脅迫したといえるので、脅迫罪の実行の着手が認められる。 ※脅迫罪の「脅迫」に当てはめています。明示的には告知していませんが…都合の悪いところを無視しないこと。 (3)以上より、Xは脅迫罪の罪責を負う。

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