V(当時31歳)は、知人のA夫妻とスナックで飲食していたが、午後10時ころ、A夫と他の客がトラブルとなった。A妻は酒癖がよくなく、その客とさらにトラブルを生じそうになったので、VはA妻を店外に連れ出してなだめていた。しかしA妻は、Vに対し「うるさい」「放せ」などと毒づいて暴れ、同女は店の向かいの倉庫の鉄製シャッターに大きな音を立てて頭部ないし背中をぶつけ、そのまま右コンクリート上に尻もちをつく形で転倒した。 そこに通りかかった、空手3段、居合道3段等の腕前を有する英国人の被告人Xは、VがA妻に暴行を加えているものと誤解し、同女を助けるべく両者の間に割つて入つた上、日本語で「やめなさい、その人はレディーですよ」などと叫び、Vに背を向ける形で2人の間に割って入った。そしてXはA妻を助け起こそうとしたが、A妻は酔っていて立ち上がることができず、Xが外国人だと気づいて「ヘルプミー、ヘルプミー」と叫んだ。 次いでXはVの方を振り向き、両手を差し出して同人の方に近づいたところ、Vは左足を右足よりやや前に出し、胸の前で両手を拳に握つて左手を前に右手をやや後に構える、いわゆるボクシングのファイティングポーズのような姿勢をとつた。そこでXは、VがA妻のみならず自分に対しても殴りかかつてくるものととっさに判断し、靴をはいたままの左足の甲を使つてVの右顔面付近に対し回し蹴りを加えた。 そのためVはその場に後ろ向けに、「電信柱が倒れるように」転倒し、その際左側頭部をコンクリート床に強打して、頭蓋骨骨折などの傷害により8日後に死亡した。 Xは傷害致死で起訴されたが、正当防衛が成立すると主張した事案。
1 Xの罪責 XはVに対し回し蹴りを加え、頭蓋骨骨折などを負わせていることから、(1)を(2)といえ、傷害罪(204条)の(3)(4)をみたす。また、Vはこれによって8日後に死亡しており、(5)も認められる。 ※構成要件的故意か、責任故意かについては答案上表現する必要はありません! 2 違法性阻却事由 (1)もっとも、Xは、Vが自分にも殴りかかってくると(6)していることから、(7)が(8)されないか問題となる。 ※誤想防衛の論述から(タイトルは省略しました。) (2)そもそも(9)の(10)は、(11)に(12)しつつ(13)(14)に出るという(15)(16)に対する非難である。だとすれば、自己の行為が正当防衛に当たると考えている以上、(17)が(18)な(19)の(20)の(21)はないといえる。 ※故意責任の本質については非常に重要なので、誤想防衛から書きました。 したがって、VがXにも殴りかかってくると(22)しているXには、原則として(23)の(24)があり、(25)は(26)されるべきである。 (3)誤想過剰防衛 しかし、Xの行為が(27)として(28)である場合も、このように考えるべきか。 ※場合分けの別パターンについては、常に書く必要はありません。 この点については、(29)について(30)がある場合には、(31)が成立すると解する。なぜなら、たとえ(32)の(33)があると(34)していても、その(35)が(36)であることの(37)があれば、(38)の(39)が可能だからである。 (あてはめ)これを本件についてみると、Vは素手でファイティングポーズをとっていたにとどまる。これに対し、空手3段のXが、人体の急所である顔面に、回し蹴りという極めて強力な打撃を加えることは、(40)としては(41)なものである。そして、Xはこの(42)について(43)していた。 以上より、Xの故意は阻却されず、傷害致死が成立する。 (4)36条2項 もっとも、(44)に関する36条2項の趣旨は、(45)において恐怖等により(46)が(47)する点にあると考えられるところ、(48)の場合も、行為者の(49)においては(50)が見られるので、本件のXにも準用できると解する。 ※関連論点なので、問題提起を省略 (5)結論 Xは傷害致死の罪責を負うが(205条)、36条2項によって刑を(51)、または(52)されうる。
※回答内容が保存され、問題作成者が閲覧できます