1-27-0 刑法判例27-保護責任者の意義
(1) 事案(最決S63.1.19)
Xは、産婦人科医師として、妊婦A(当時16歳だったが、Xには17歳だと申告していた)の依頼を受け、昭和55年10月17日午前10時30分ころ、自ら開業する医院で妊娠第26週に入った胎児の堕胎を行った。堕胎により出生した未熟児V(推定体重1000g弱)は、保育器等の未熟児医療設備の整った病院の医療を受けさせれば、短期間内に死亡することはなく、むしろ生育する可能性のある状態だった。 Xはこれを認識し、かつ上記の医療を受けさせるための措置をとることが迅速容易にできたにもかかわらず、Vを保育器もない自己の医院内に放置したまま、生存に必要な処置をとらなかった。XはAに「子供は医院で預かるから、一日一回は見にきなさい」と告げ、同日午後5時ころにAを退院させた。その結果、出生後約54時間ころにVを死亡させた。 そこで、Xに保護責任者遺棄致死罪が成立しないかが争われた事案。
3 実践的書き方
第1 Xの罪責 1 保護責任者遺棄致死罪(218条、219条) (1)保護責任者 ※趣旨から書く場合は、紫部分も 218条の趣旨は、(1)の(2)・(3)の(4)を(5)する点にあると解する。したがって、218条の「保護する責任がある者」とは、(6)・(7)・(8)等により、(9)が認められる者をいう。 そこで検討すると、XはVを違法に堕胎させており、Vの生命に危険を生じさせた先行行為がある。そして、XはAを退院・帰宅させ、Vを医院でひきとっており、Vに(10)を設定している。またXはAを診察した医師であって、Vの(11)を(12)すべき(13)上の(14)もある。したがって、Xは218条の(15)にあたる。 ※契約上の義務だけで終わらないように (2)不保護、故意 そしてXは、自己の医院にVを預かりながら、生存に必要な処置をとっていないから、「その(16)に(17)な(18)をしなかった」といえる。 また、同条の(19)は、(20)となる行為及び(21)を基礎づける事実の(22)・(23)であるから、本件ではいずれも認められる。 (3)結果の発生、因果関係 そしてその結果Vは出生後54時間ころに死亡している。また、Vは医療設備の整った病院の医療を受けさせれば、短期間内に死亡せず、生育する(24)が認められたから、Xの(25)とVの(26)との間の(27)も認められる。 (4)以上より、Xに(28)(29)が成立する。 2 不作為の殺人罪(199条) なお、Xに(30)の(31)が成立しないかも問題となりうるが、両罪の区別は(32)の(33)によってすべきと解する。 そこで検討すると、確かにXは自己の医院に保育器等の設備を有していないが、Aに対してVを「預かる」「一日一回は見に来なさい」と告げており、(34)Vの(35)を(36)していたとまでは言えない。 したがって、Xに不作為の殺人罪までは成立しない。 以上 ※区別はメイン論点でないと考え、簡単に終わらせる場合
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