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1-44-0 刑法判例44-写真コピーの文書性

(1) 事案(最判S51.4.30)

行政書士であるXは、供託金の供託を証明する文書として行使する目的をもって、昭和48年7月26日頃から同年12月28日頃までの間、X方行政書士事務所等において、旭川地方法務局供託官Y作成名義の真正な供託金受領証から切り取ったYの記名印及び公印押捺部分を、虚偽の供託事実を記入した供託書用紙の下方に接続させてこれを電子複写機で複写する方法により、Yの作成名義を冒用し、あたかも真正な供託金受領証の写しであるかのような外観を呈する写真コピー1通を作成した。そして、北海道上川支庁建設指導課建築係係員Aらに対し、供託金受領証の写真コピー1通を真正に成立したもののように装って提出または交付行使した。 そこで、Xに公文書偽造罪・同行使罪が成立しないかが争われた事案。





(3) 実践的書き方

第1 Xの罪責 1 公文書偽造罪(155条1項) (1)Xは、Aに対し本件コピーを提出しているので、これが同条の、公務員の作成すべき「文書」にあたるか。 この点、Xは本件コピーをコピーとして提出しているので、作成名義人は明示されていないとも思える。しかし、公文書偽造罪の保護法益は公文書に対する社会の信用であるから、写しであっても、原本と同様の社会的機能・信用を有する限り、同罪の「文書」にあたると解すべきである。 これを本件についてみると、本件コピーは外観上、原本を機械的に正確に複写して作成されており、原本同様の社会的機能・信用を有しているといえ、同条の「文書」にあたる。 (2)ア そして本件コピーには、Yの記名・押印のコピーがあるから、真正な印影のある真正な原本の存在を想起させるといえる。したがって、記名押印はコピーであっても、「公務員の印章若しくは署名を使用して」にあたる。 ※有印であること イ そして、本件コピーはその外観上、一般人の認識において、原本を作成した者はYだと理解されるものであるから、名義人はYである。一方、本件ではYの許諾なく、元の書面と異なる内容の書面を作成しているから、作成者はXである。したがって、名義人と作成者の間に不一致があり、「偽造した」にあたる。 ※偽造であること ウ またXには故意も認められ、かつこれをAに提出する目的で作成しているから、行使の目的も認められる。(3)以上より、Xに公文書偽造罪が成立する。 2 また、Xは作成した本件コピーを実際にAに提出しているから、同行使罪(158条1項)も成立し、両者は通常手段と結果の関係に立つので、牽連犯となる(54条後段)。

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