1-21-0 刑法判例21-承継的共同正犯
(1) 事案(最決H29.12.11)
氏名不詳者(以下Cら)は、Aが「数字選択式宝くじであるロト6に必ず当選する特別抽選に選ばれたことによりその当選金を受け取ることができる」と誤信しているのに乗じ、Aから現金をだまし取ろうと考えた。 そこで平成27年3月16日頃、福岡県内のAに対し、B会社のCを名乗り、電話で、「Aさんの100万円が間に合わなかったので、立て替えて100万円を私が払いました。」「Aさんじゃない人が送ったことがD銀行にばれてしまい、今回の特別抽選はなくなりました。不正があったので、D銀行に私とAさんで297万円の違約金を払わないといけなくなりました。違約金を払わないと今度の抽選にも参加できないので、半分の150万円を準備できますか。」などと嘘を言って(以下「本件欺罔行為」という)、現金150万円の交付を要求した。 しかし、Aは息子から詐欺の可能性を指摘され、警察に相談してCが嘘を言っていることに気づいた。そして、Aは、警察官から詐欺の犯人を捕まえるため、引き続きだまされたふりをしてほしいと依頼され、それに応じた(だまされたふり作戦)。その後Aは、だまされているふりをして、Cに対し「何とか友人にお金を借りて120万円は用意できました。」などと嘘を言ったところ、Cから現金の送付場所(大阪市内所在の空き部屋であるが、以下「本件受領場所」という。)を指定された。そのためAは、現金が入っていない箱1個を本件受領場所宛てに発送した。 一方、Xは、同年3月24日に知人から、「他人の名前を使って荷物を受け取り、1回5000円から1万円の報酬がもらえる仕事」(以下「本件受領」という)があると持ち掛けられ、それを引き受けることにした。 Xは同月25日、知人から紹介されたEの指示に従い、本件受領場所に赴き、待機していた。すると、配達員を装った警察官が本件荷物を持って本件受領場所に来て、「こんにちは、宅急便です。」と呼んだため、室内にいたXがそれに対応した。警察官が、Xに対して「Fさんですか。」と尋ねると、Xは「Fです。」と答え、荷物の受取りサイン欄にサインをして、本件荷物を受け取った。そこで、警察官はXを詐欺未遂の現行犯人として逮捕した。
(4) 実践的書き方
※Xに詐欺罪の未必の故意はあったものとして構成します
第1 Cの罪責・詐欺未遂罪(246条1項、250条) 1 (実行の着手時期→欺罔行為、錯誤あり、さらに現金を送れと言っているので、着手あり) 2 (しかしAは途中で気づいてだまされたふり作戦→(?)不能犯の論点?→不能犯は不成立) 3 (結論・Cに詐欺未遂罪が成立)第2 Xの罪責・詐欺未遂罪1 承継的共同正犯(60条) 第2 Xの罪責・詐欺未遂罪 1 承継的共同正犯(60条) (1)本件では、XはCらによる詐欺の計画につき(1)の(2)を有しながら、Aからの荷物を受け取っている。そこでXも、先行者たるCらの(3)の(4)を負わないか。 ※もし、Xの故意も論じなければならない場合、前提として、最初に論じると書きやすいでしょう。 そこで検討すると、そもそも、(5)が「(6)」とされるのは、(7)の(8)のもとに、(9)に(10)の(11)を(12)して(13)を(14)する点に(15)がある。そうすると、(16)の(17)と、(18)の(19)及び(20)との間には、通常、(21)が認められないから、(22)として、(23)は(24)の(25)の(26)について(27)を(28)が、(29)に相互利用補充関係が認められる場合には、(30)も(31)を(32)ものと解する。 (2)本件では、C((33))が(34)の(35)を行い、X((36))が(37)の(38)を(39)している。本件(40)においては、もともと(41)の(42)が(43)されていた。Cによる(44)は、Xによる(45)な(46)を(47)としてなされたものであり、Xによる(48)の(49)は、Cの(50)によって被害者が(51)に陥っている状態を(52)してなされるものであるから、XとCの行為の間に、(53)して(54)を(55)させるという(56)が認められる。 したがって、本件では、(57)に(58)たるXは(59)たるCの(60)の(61)についても(62)を(63)と考える。 2 以上より、Xにも、(64)が成立し、Cと(65)となる。 3 なお、上記のように、後行者は先行者の行為の結果についても責任を負うと考えるので、本件ではだまされたふり作戦が開始されているが、C同様、Xにも詐欺未遂が成立することに変わりはない。
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