1-41-0 刑法判例41-電子計算機使用詐欺と電子マネーの取得
(1) 事案(最決H18.2.14)
Xは、路上で仮眠していた男性Vが所持していたセカンドバッグ(クレジットカード等6点在中のもの)を窃取した。 そして、同クレジットカードの番号・氏名等を冒用し、出会い系サイト等の決済手段として使用される、いわゆる電子マネーを不正に取得しようと企て、Xの携帯電話機を使用して、インターネットを介し、クレジットカード決済代行業者が電子マネー販売等の事務処理に使用する電子計算機に、本件クレジットカードの名義人氏名・番号・有効期限・Xの携帯番号等を入力送信して、同カードで代金を支払う方法による電子マネーの購入を申し込んだ。 その結果Xは、決済代行業者の電子計算機に接続されているハードディスクに、名義人(V)が同カードにより販売価格合計11万3000円相当の電子マネーを購入したとする電磁的記録を作り、同額相当の電子マネーの利用権を取得した。 そこで、Xは電子計算機使用詐欺罪に問われたが、弁護人は正規の名義人氏名・カード番号等を入力している以上、「虚偽の情報若しくは不正な指令」(246条の2)を与えたとは言えないとして争った。
(3) 実践的書き方
第1 Xの罪責 1 電子計算機使用詐欺罪(246条の2) (1)XがVの氏名やクレジットカードの番号を送信した、決済代行業者の電子計算機は、同条の「人の事務処理に使用する電子計算機」にあたる。しかし、Xが送信しているのは正規のVの氏名やクレジットカード番号なので、「虚偽の情報」とは言えないようにも思える。 ※枕詞の問題提起は省略して、いきなり要件の検討から入りました(長くなるから)。 しかし、実際にはVは本件電子マネーの購入を申し込んでいないにも関わらず、Vが申し込んだとする情報を送信しているので、Xは「虚偽の情報」を送信したといえる。そして、これによって作出された電磁的記録は、Vが申し込んでいないにも関わらず、Vがこれを購入したとする情報であるから、「不実の」電磁的記録といえる。 (2)そして、Xはこれによって電子マネーの利用という財産上の不法の利得を得ており、第三者であるVに代金の支払い義務という損害を与えている。そのほか、Xに故意と不法領得の意思が認められ、全体が因果関係に包摂されているので、同罪が成立する。
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