1-29-0 刑法判例29-脅迫罪の意義

(1) 事案(最判S35.3.18)

昭和30年10月1日に町村合併促進法が施行され、奈良県にあった天満村は橿原市(かしはらし)か、大和高田市のいずれかに合併することとなった。そして、天満村の根成柿(ねなりがき:地名)は大和高田市に一旦合併することとなったが、最終的な帰属についてはなお議論されていた。根成柿では、合併前から高田派(A・Bを中心とする)と橿原派(Xら4名を中心とする)とが対立し、抗争が続いていた。 両派の抗争はその後の分市(最終的な帰属)についての住民投票に際してますます激化し、互いに感情が悪化し、強烈な言論戦・文章戦その他あらゆる手段によって自派の投票獲得に奔走する状況になっていた。 そのような中、昭和32年9月8日ころ、XはA宛に発信人B名義の「出火御見舞申上げます火の元に御用心」と記載した郵便ハガキ1通を作成して投函の上、Aに受領させた。また、同日、XはB宛に発信人A名義の「出火御見舞申上マス火の用心に御注意」と記載した郵便ハガキ1通を作成して投函の上、Bに受領させた。なおこのとき、実際には出火の事実などはなかった。 そこで、Xに脅迫罪が成立しないかが争われた事案。





(3) 実践的書き方

第1 Xの罪責 1 脅迫罪(222条1項) (1)XはA、Bという「人」それぞれに「出火御見舞」等と記載したハガキを送っている。そこでこれが「(1)(2)(3)して」「(4)した」といえるか。この点、たとえ文面上は見舞いハガキであったとしても(5)の下で(6)(7)する程度の(8)(9)があった場合は、(10)があったというべきである。 そこで検討すると、本件では出火の事実もないのに、 「出火御見舞」というハガキが何者かによって投函されている。そしてこのときA、Bは対立する組織と激しい抗争中であったことを考えると、一般人なら、その何者かが暗に放火するぞと警告していると受け止めるのが通常である。したがって、本件ハガキを送付する行為は、(11)(12)させる程度の(13)(14)であるといえ、(15)にあたる。 ※Xの行為を、「(16)(17)」といえるか、という側面から引きなおして書きました。自分の立てた基準に当てはめる。 (2)そして、放火は(18)(19)(20)等に(21)を生じさせるものである。また、実際にハガキを投函したXには(22)も認められる。 ※一応、その他の要件もフォロー (3)以上より、XにはA・Bに対する(23)がそれぞれ成立し、(24)(25)にしているから(26)(45条)となる。

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